ファイブフォース分析とはどんなマーケティングフレームワークなのか?ファイブフォース分析の目的やメリットを詳しく解説
有名なマーケティングフレームワークにポーターのファイブフォース分析があります。
これは、業界を形成する 5 つの競争力を特定、分析し、業界の弱点と強みを判断するのに効果的なフレームワークです。ファイブ フォース分析は、企業戦略の意思決定決のために業界の構造と外的要因を把握するためによく使われています。
今回は、ポーターのファイブフォース分析について基礎的な知識や、他のフレームワークとの違いを解説します。
ポーターのファイブフォース分析とは
ファイブフォース分析とは、ハーバード・ビジネス・スクールの教授であったマイケル・ポーター氏が提唱した、マーケティング戦略におけるフレームワークです。
企業、及びマネージャーやアナリストが、企業が直面している競争状況を理解し、その中で企業がどのように位置付けられているかを理解するのに役立つツールです。
ポーター氏が1980年に発表した初の著書「競争の戦略」によって提唱されましたが、40年以上前に作成されたにもかかわらず、ファイブフォース分析は、有用なツールであり続けています。
ファイブ/Five=5つの、フォース/Force=驚異の意味を持ち、自社にとっての「脅威」となる下記の5つの要素を分析し、業界全体の状況、自社の収益構造を把握するために使います。
○業界内の競争(競合)
○新規参入者の脅威
○サプライヤーの交渉力
○バイヤーの力
○代替品の脅威
ファイブ フォース分析を使用することで、ビジネス戦略を導き、競争上の優位性を高めることができます。
ファイブフォース分析の特徴は、個を分析するのではなく、業界(産業)全体を分析するところにあります。自社、及び競合の業界内における構造や魅力度などを明らかにすることができるのです。
ファイブフォース分析における5 つの脅威を理解する
ファイブ フォース分析は、企業の産業構造や、企業戦略を分析するために広く使用されています。
ポーター氏は、世界のあらゆる市場と業界の形成に関わる「脅威」を5つに絞って特定して分析することを提唱しました。
1. 業界内の競争(競合)
5つの力の1つ目は、競合他社の数と、企業を弱体化させる能力を指します。
競合他社の数が多く、それらが提供する同等の製品やサービスの数が多ければ多いほど、企業の力は弱くなります。
逆に、競争力が低い場合、企業はより高価格帯での価格設定が可能となり、より高い売上高と利益を達成するための取引条件を設定する力が大きくなります。
2. 業界への新規参入者の可能性
企業内のパワーバランスは、市場への新規参入者の力によっても影響を受けます。
規模の大きな企業であったり魅力的な製品やサービスを開発している競合他社が企業の市場に参入すれば、業界の競争は激化し、既存の企業の地位は大幅に低下する可能性があります。
参入障壁が高い業界であれば、すでにポジションを確立できている企業にとって理想的です。なぜなら、値下げをする必要もなく好条件での交渉ができるからです。
3. サプライヤー(売り手)の交渉力
サプライヤーとは、企業に対して製品の部品であったり資材、必要なサービスを供給する売り手を指します。
ファイブフォース分析の中で「脅威」とされるのは、サプライヤーがいかに簡単に投入コストを押し上げることができるかということです。
これは、商品またはサービスに対するサプライヤーの数、また独自性や企業が別のサプライヤーに切り替えるのにどれくらいの費用がかかるか、などの要因に影響されます。
業界へのサプライヤーが少なければ少ないほど、企業はサプライヤに依存するようになります。
サプライヤーが多い場合や競合するサプライヤー間の切り替えコストが低い場合は、企業は投入コストを低く抑えて利益を高めることができます。
4. バイヤー(買い手)の力
バイヤーとは、消費者や顧客といった買い手を指しています。
企業が何人のバイヤーまたは顧客を持っているか、各顧客がどれほど重要であるか、および企業がその製品の新しい顧客または市場を見つけるのにどれだけの費用がかかるかによって影響を受けます。
競合他社が多くなれば、必然的に価格競争に巻き込まれてしまい、買い手市場の中で自社の収益性は下がってしまいます。自社と消費者や顧客との力関係が適切かどうかを見極める必要があります。
5. 代替品の脅威
ファイブフォース分析では代替品にも焦点を当てています。
企業の製品またはサービスの代わりに使用できる代替品またはサービスは、自社の競争力にとっても脅威をもたらします。
類似している代替品がない商品やサービスを生産する場合は、価格を引き上げて高収益が実現できます。
しかし、類似していて価格の安い代替品がある状態では、顧客は自社の製品を購入しないという選択肢を持ってしまい、自社の競争力が落ちる可能性があります。
ファイブフォース分析の目的
ファイブフォース分析における目的は、自社の置かれている業界内での立ち位置を客観視して、次の事業展開に活かしていくことです。
マーケティング戦略において徹底した競合調査の重要性は今では誰もが知るところでしょう。
ファイブフォース分析をおこなうことで、競合他社の動向を常に把握し、競合他社の長所と短所を判断して何を避けるべきか、自社が優れている点は何かを知ることができます。
また業界全体で何が起こっているか (トレンドなど) を正確に把握することができるようになるので、消費者のニーズに合わせて自社の製品やサービスを進化させ、ビジネスをよりダイナミックに転換していくことも可能です。
ファイブフォース分析は外的要因にフォーカスしているマーケティングフレームワークなので、他のフレームワークよりもさらに一歩進んでいるといえます。
市場の特定の要素を詳細に調べる必要があるため、より戦略的なビジネス上の意思決定を行うことができます。
業界の利益機会と成功への潜在的な脅威を理解することで、会社の強みを特定してそれを活用したり、弱みとその改善方法の判断がしやすくなります。
ファイブフォース分析のメリット
ファイブフォース分析の持つメリットには次のようなものがあります。
自社の強みと課題を発見できる
ファイブフォース分析をおこなうことで自社の強みや課題を客観的に見ることができます。
競合他社と比較した時の自社の強みを把握することで、改善していくポイントも明確になります。
収益性の向上につながる
ファイブフォース分析によって、自社にとっての「脅威」が何かが分かるようになれば、予算の配分や収益が減少した時の対策が事前にしやすくなります。
そのため収益減のリスクを下げ、増収に向けてのプラン策定、アクションがしやすくなるメリットがあります。
経営リソースの配分が最適化される
自社、競合他社、及び業界全体を把握できるので、自社の経営資源の配分に対しても決定がしやすくなります。経営リソースを最適に分配することはビジネスにおいても特に重要で、収益の向上にもつながります。
新規参入や撤退の判断がしやすくなる
ファイブフォース分析で業界の構造やトレンドを把握できるようになれば、新規参入しても大丈夫か?撤退すべきか?といった経営上の判断もしやすくなります。
ファイブフォース分析とSWOT分析の違いとは?
ファイブフォース分析と同様にSWOT (強み、弱み、機会、脅威) 分析も、分析と戦略的意思決定に使用されるマーケティングフレームワークです。
二つのフレームワークの違いとしては、SWOT分析では組織内をより深くリサーチすることで内的要因を明確化し、ファイブフォース分析は業界内の競争環境を分析して外的要因を明確化するという違いがあります。
まとめ
ポーターファイブフォース分析は、企業の競争環境における重要な項目を明確にしてくれます。
自社の立ち位置だけでなく、競合他社の長所や短所、業界全体を広い視野で視るためのフレームワークなので経営上の判断がしやすくなります。しかし、一方で客観的な分析や
分析単位の明確化が出来ていないと正常な判断ができない注意点もあります。
収益の向上のためにもファイブフォース分析を有効に使ってみてください。